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●活動報告 2002年度

2002年度の集中授業「映像論」は非常勤講師岡部泰明先生を中心に、2名の外部講師を招いて開催された。

スタジオ・ジブリCG室長片塰満則氏
映画監督柳町光男氏

茨城大学教育学部一般公開授業 映像論/映像制作現場の講師を迎えて
開催報告1 2002年12月22日(日)
片塰満則氏(かたあま みつのり)
スタジオ・ジブリCG室長の片塰氏は1964年山口県出身。
1995年よりスタジオ・ジブリに所属し、宮崎駿監督作品「もののけ姫」からCG制作スタッフとして参加。
「となりの山田くん」を経て、ベルリン映画祭金熊賞・米国アカデミー長篇アニメーション賞に輝く「千と千尋の神隠し」と最新作「ギブリーズ2」でデジタル作画監督。
現在、宮崎駿脚本・監督のジブリ新作「ハウルの動く城」(2004年夏公開予定)を制作準備中。
◎講議内容
1)スタジオジブリの紹介とセルアニメーションの制作工程
2)デジタル化以前の表現技法
3)ジブリにおけるデジタル映像制作工程
この講議には、受講学生を含めて約180名の参加者がありました。
以下に、講議内容の一部を紹介しましょう。
1)スタジオジブリの紹介とセルアニメーションの制作工程   
「千と千尋の神隠し」制作に実際使用された絵コンテ(宮崎監督が描いた映画の流れを絵で表したもの)を示して、絵コンテから原画や動画、さらには映像へ表現されていくプロセスを丁寧に紹介していただきました。オープニングの9秒のシーンについて20分かけて説明〜説明にこれだけ時間がかかる内容がこのシーンに表現されていたのです。また、描かれた動画が約16万枚という話に、受講生一同ため息!
2)デジタル化以前の表現技法
宮崎作品で片塰氏が特に感銘を受けたり影響を受けた表現について紹介されました。紹介された作品は「アルプスの少女ハイジ」「未来少年コナン」「天空の城ラピュタ」〜さてこの3作品のどのようなシーンが取り上げられたか、想像してみてください!
さらに、片塰氏が仕事上特に関わっている「背景表現」の推移についても説明されました。そして、その表現が進化した先にデジタル表現があるのです。
3)ジブリにおけるデジタル映像制作工程
紹介されたのは「もののけ姫」「となりの山田くん」「千と千尋の神隠し」でのデジタル制作プロセス。特にあっさりと出来ているように感じる「となりの山田くん」は、現場サイドの話で初めてわかるクオリティの高い表現、複雑な制作過程がまさに「制作秘話」で、作品を見る目も変わってしまう。
また、「千と千尋の神隠し」の「川の神様が風呂から沸き上がるシーン」の制作には3ヶ月かかった話など、デジタル表現にかかわる様々な逸話と技法が紹介された。

一般参加者のアンケートも一部紹介します。
・想像以上に面白かったです。今後アニメの見方が変わってしまいそうです。学生の時の5倍くらい真剣に聞いてしまった。(これは卒業生ですね)
・師走の忙しい中を来て良かったという感謝の念でいっぱいです。今回、国際的な賞をなぜジブリ作品が受賞できたのか、そのからくりを解読できたことに嬉しさを感じます。11歳のジブリファンの娘を連れてくればよかった。
今回、授業の告知が充分でなかったのにも関わらず、沢山の方々においでいただき、主催者として感謝申し上げます。
今後も、このような機会を設定していきたいと考えておりますので、その際にはまたぜひご参加下さい。

講議中の片塰氏
休憩時間中の学生の質問に答える片塰氏

茨城大学教育学部一般公開授業 映像論/映像制作現場の講師を迎えて
開催報告2 2003年1月12日(日)
柳町光男氏(やなぎまち みつお)
映画監督/1945年茨城県出身。
1970年 東映教育映画部の作品にフリーで参加。大和屋竺氏に指事。
1974年 “プロダクション群狼”設立。
1976年 「Black Emperor ゴッド・シピード・ユー」でデビュー。
1979年 「19歳の地図」監督・脚本(キネマ旬報ベストテン7位)。
1982年 「さらば愛しき大地」製作・監督・脚本(キネマ旬報ベストテン2位)。
1985年 「火まつり」監督(キネマ旬報ベストテン3位)。
1990年 「チャイナシャドー」監督・脚本。
1992年 「愛について、東京」製作・監督・脚本(キネマ旬報ベストテン7位)。
1995年 「旅するパオジャンフー」監督。
現在、早稲田大学客員教授 以下に、講議内容の一部を紹介しましょう。
1)「近松物語」の上映
今回の講義で映像分析する溝口健二監督の「近松物語」(1954年大映作品)を上映しました。
監督の映画を見る際の注意として「映画は物語で見ないでください。映像が語るものを見てください」という言葉は印象的。この映画は「ゴダールの映画史」に映像として取り上げられている唯一の日本映画。日本映画史上の最高傑作であると監督は言っておりました。
20歳前後の学生にとって溝口作品はほとんど初体験。今から50年前の作品をどのように見たでしょうか。
2)「近松物語」の表現技法.1
「近松物語」の原作は近松門左衛門の「大経師昔暦」。宮中の表具や暦を刊行する「大経師内匠」の手代・茂兵衛はふとした偶然から内儀・おさんとの不義密通の疑いをかけられる。窮地にたった二人はやがて真実の愛に目覚め、ついには捕らえられ刑場に引かれていく。
この講義では前半部分、茂兵衛と茂兵衛に思いを寄せる女中・お玉の思いがすれ違う会話シーンを取り上げて、分析・解説された。この、シーンは経師屋の仕事場で展開され、片思いのお玉の心が通じない姿、茂兵衛が心中を表さない姿、そしてそれらの内面が映像として、演出としてどう表現されているかが分析された。
3)「近松物語」の表現技法.2
この講義で解説されたのは、映画前半部分のクライマックス、不義密通の疑いの原因となる茂兵衛が店の金を融通したことが発覚したシーン。この金策はおさんから頼まれたもので、茂兵衛に責任はない。しかし、主人・以春はそれを知る由もなく茂兵衛を責め立てる。そこへ茂兵衛の罪をかぶるためにお玉が自分が茂兵衛に頼んだ事と嘘を言って飛び込んで来る。このお玉はずっと以前から主人に言い寄よられていた相手でもある。この茂兵衛・おさん・以春・お玉に番頭を加えた5人が、それぞれの思惑を秘めて交錯するシーン。溝口演出の極地とも言える名シーンである。監督は、このシーンのシナリオ上の構造、セットの構造、個々の役者の演技と配置、カメラアングルとカメラの動き等を細かく分析・解説した。

講議中の柳町氏