●いよいよ始まりました、茨城大学美術科出身で卒業後もアーティスト活動をつづけている方を紹介するアーティストリレー! その記念すべき一人目に紹介させていただくのは、茨城大学美術科の第一回卒業生である後藤末吉さんです。後藤さんは卒業後も教員として大学に残り、退官されるまでの長い間この茨城大学に関わりつづけてきた方です。
年齢:
卒業年度:
卒業研究分野:
職業等:
代表作品:
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81歳(2012年7月取材時)
昭和27年度(昭和28年3月/1953年3月)卒業(第1回)
彫刻(等身大の人物塑像)
茨城大学名誉教授(1953年助手〜 1963年講師〜 1969年助教授〜 1977年教授〜 1996年退官)
《ヒンズーの踊》シリーズ
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●後藤末吉さんにインタビューしてきました
●茨城大学に在籍中に印象に残った授業はどんなものでしたか。
2年生のときの今で言う夏休みの特別演習が印象に強く残っているね。それまでモデルというのは見たことないから、このとき初めてヌードモデルをやったのが印象に残っているな。担任だった稲村退三先生がなんとか学生にいいものをやらせたいと思い、東京からモデルを探してやったわけ。午前中は絵画、午後は彫塑というかたちで、1週間くらいの期間でやった。とにかく意欲が倍加するような授業だったね。
●印象に残っている先生方との思い出を教えてください。
先生たちもだいたい寮にいたから、夜は暇で、先生のところに行ってご馳走になったりしたね。当時は食い物がなかったから、先生のところですき焼きなどの食事をやるのが楽しみだった。
●学生同士での交流の中で印象に残っていることなどありますか。
覚えてるのは関西古美研(※)。2年生の時に初めてやったんだよ。それがすごくって感激したね。奈良3泊、京都2泊、それから往復が車中泊。あのころはね、法隆寺なんかを自由に見て回ってね。桂離宮も覚えているな。今は庭しか見られないけど、当時は御殿にあがれ、丁寧に説明してもらった。
(※)・・・集中授業の一つで、古美術研究のために奈良・京都方面に約1週間旅行に行くもの。現在も毎年行われている。
●多くの作品を発表されていますが、特に思い入れの強い作品を教えてください。
《ヒンズーの踊》かな。昭和55年の12月に初めてインドに行って、踊りを見て感動して、そのシリーズを作り始めてね。全部で26,7年間やったかな。その間インドに5回行ったけど、最初に見た踊りが一番印象が良くってね、それを作りたいと思ったのが最初なんだけども。
踊りに惹かれたのは形の美しさは基本だけども、プラス、ヒンズーの神に対する信仰心。それが踊りに表れてるっていうのがよかった。特に最初はたまたまホテルの野外劇場で見たんだけど、びっくりして、それから作ることを考えたわけ。このときは舞踊学校の学生たちの踊りで、技術的にはまだ未熟なんだけど信仰心があって、それがよかったんだね。そういうたまたまの出会いが大事だって気がするんだよね。展覧会に出すことも制作のひとつの目的だけど、やっぱり自分の本当に感動するものにめぐり合って技術力もあいまって初めていい作品ができるんじゃないかと思うんだよね。
●茨城大学には正門からよく見える目立つ位置に後藤さんの作品である≪覇者≫が展示されていますが、その≪覇者≫についてお聞かせください。
あれはね、昔、日展に出すために作ったんだけど、たまたま体つきのすごく立派な学生がいてこれはすばらしいと思って作った。槍を持たせたのは本人が槍投げの選手だったこともあったけども、空間構成のために槍があったほうがいいと気づいて持たせた。槍は長いから、あると空間が広がる。そういうのがよかったんだね。今から6,7年前退官後に、何にも形に残せるものがないから、自分が育った大学に何か残したいと思って寄贈した。
●茨城大学を卒業された後、すぐに茨城大学の助手として就職されていますが、なぜでしょうか。
最初は他の就職先に就こうと考えていたが、当時の主任教授の稲村先生が「お前大学に残れ」といわれて。2年の終わりかな。それでそのまま。
●教師として学生とかかわるときに心がけていたことはありますか。
最初はね、先生と学生という関係じゃなくて、先輩と後輩のような感じだったな。一般的には、後に生まれるか先に生まれるかの違いだけど、美術の表現に関しては先生も教え子も、いいものはいいものだからね、そういうものは尊重していくって感じだな。
●教師時代に印象に残っている出来事はありますか。
若いときのほうが学生と一体感があったな。一緒に仕事をしたり、遊びにいったりしていたけど、それがだんだんなくなっていった。それがちょっと残念だったね。歳をとって学生との感じ方に違いが出てきてしまったことも残念だね。
●茨城大学を退官された後はギャラリーゴトウの運営をされているんですよね。
運営というほどではないけど、多少発表する場を設けて利用してもらえればいいと思ってね。作品は並べてみると、いろいろなことがわかるからね。このギャラリーで卒業生がときどき展覧会をやるんだよ。
後藤さん、ご協力ありがとうございました。 (谷津/啜 記)
●作品写真
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ヒンズーの踊『スールヤ』
ブロンズ/1992年
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『覇者』
ブロンズ/1962年
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