このコーナーでは、個別の授業を取り上げてその内容を紹介します。


「絵画表現演習I」

授業名

担当教官

対象学年

対象学生

開講時期

絵画表現演習I

十河雅典

3年次以上
学校教育美術選修
情報文化表現文化コース
前期(4〜7月)

 教育学部、美術の実技授業では「絵画」のカリキュラムを以下のように、学年に従って積み上げていく方式で構成されています。

1年次:近代絵画の基礎的な描写能力を養う。
2年次:印象派以降、20世紀前半までの西洋絵画の流れを知って作品制作を行う。
3年次:20世紀後半の美術運動を理解して作品制作を行い、自己の表現を模索する。
4年次:自己の絵画表現を探求し卒業制作を行う。

 このホームページでは3年次の学生7人が、前期の授業「絵画特別演習I」(次年度からは「絵画表現演習I」の名称で開講)で取り組んだ課題の一部を学生自身の声で紹介します。この課題はどれも1週間単位で制作するミニ課題で、学生は10程度のミニ課題を試みた後、前期のまとめとして大きな作品を制作することになっています。

1.O・Cさんの作品「紙と鉛筆だけで作品をつくる」


 私は紙と鉛筆という単純な画材だけで「立体的な絵画作品」を作ろうと思いました。出来上がりは紙と鉛筆だけで作ったとは一見したところ分らないようにしたいと考えました。そこで台となる紙とその上に乗せる箱の表面を柔らかい鉛筆でビッシリと塗りつぶし、ちょっと見ると鉛で出来ているように黒光りさせました。箱の中に、やはり塗りつぶしたスケッチブックをいれたのは、箱を”開ける”、紙を”めくる”という行為の流れを、見る人が意識することが面白いかなと思ったからです。

2.K・W君の作品「自己PRハガキをつくる」


 この作品で私は、いままでもしばしば私の作品に登場する顔のモチーフを用い、周囲四方に四大元素(火・水・空気・土)の象徴を配することで画面を仕上げた。
 ハガキという形態は私が以前からメイル・アートとして使っていたので、この作品もその延長としての表現と考えている。また四大元素という近世以前のモチーフ(思想)を自己PRとして描き込んだのは、私が関心を抱いている中世の精神世界を表現したいと思ったからである。

3.K・T君の作品「パフォーマンスをやる」


 本作品は童話にある”鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのは誰?”を元にしたパフォーマンスである。自分が鏡に「世界で一番醜い男」を尋ねながらながら、絵具やサランラップを使い実際にその男になっていくというものである。この作品で私は、自分の中に同時に存在している「ナルシズム」と「自虐」という対概念を提示した。あるいはそれは、全ての人間に普遍的に備わる感情なのかもしれないし、そもそもこれらの二つの感情は同一の意識野に存在しているものなのかもしれない。パフォーマンス中の、サランラップが剥がれないというアクシデントを除けばテーマ的におもしろいものであったと考えている。

4.K・Yさんの作品「日常的な素材でアートする」


 はじめはジュースの缶の「ふた」に興味を持ち、これを集めてイメージを膨らませた。また、ふと見つけた石の色と形に魅かれて、これとジュースの缶の「ふた」を組み合わせると、足の形に見えるようになり、電気コードをつないで電気で動くようにした。
 できれば、これらを数多く作り、奇妙なインスタレーションとしてみたい。

5.S・Mさんの作品「偶然を利用するアート」


 休み時間中使用していない教室で私たちが奇妙な格好をして本を読んでいます。そこに偶然入ってきた人達の反応や行動をそのまま全体として空間的・時間的な作品と考えました。
 授業中の教室を使ってみたら…、というような想像も巡らしてみました。

6.M・Aさんの作品「単位をくり返して作品をつくる」


 和紙に日本画の顔料で点描、着色した。まず様々な大きさの点を描いた和紙をいくつか作り、これを台紙となる紙に切り張りして制作した。モチーフは幼い頃よく行った地元の神社である。これは、この後続いていく私の油彩画「神社シリーズ」の第1作目にあたるものである。中央に集中している朱の点は境内に入ってすぐにある門を表している。自分にとって憩いの場であり、また故郷を象徴するといった意味が込められている。

7.K・Yさんの作品「生ものを使ったインスタレーション」


 発想の起点となったのは「生もの」をいかにして永遠化するか、ということです。ロウでできたレストランの商品見本や、ロウ人形の血の通っていないのにやけに美しいままでそこにある様子から、逆に生のもの、腐っていくものにロウを被せストップモーションをかけてみたらどうだろうと思い、この作品を作りました。外形だけがそのまま残り、トマトが腐っていく経過を写真等で記録することもやってみたいと思います。